A-Launch

現場/地域につながる/とびたつ lunch time

佐渡でふれあういのちのつながり 〜人とトキが暮らす島を孫の世代へ〜

星信彦資源生命科学専攻 応用動物学講座 教授

概要

環境中に放出・蓄積された残留化学物質が生態系や動物の健康に被害を及ぼし遺伝子発現にも作用しています。その影響は世代を越え,種の保存を脅かす地球規模での重大かつ深刻な問題となっています。これらの危機に面して解決の可能性を追求する分子毒性遺伝学的研究を行っています。
  現在、佐渡市では生物多様性が育む豊かな自然との暮らしを保全・再生するための施策を展開しています。研究室の学生とともに、ネオニコチノイド系農薬がトキの生態及び繁殖能力に及ぼす影響の評価に、取り組まれた様子をご紹介くださいます。お誘い合わせのうえ、ぜひご参加ください。
第7回A-launchでは性分化や環境ホルモンについて研究をされている星信彦先生(農学研究科応用動物学講座教授)をお迎えしました。 「佐渡でふれあういのちのつながり 〜人とトキが暮らす島を孫の世代へ〜」と題して、ネオニコチノイド系農薬がトキの生態及び繁殖能力に及ぼす影響の評価に取り組まれたお話を伺いました。

日本では野生生物の保全をすすめている一方で、ほとんどの農家が農薬を用いており、最近までは世界一の農業使用大国でした。近年、その使用量は減っているものの、ネオニコチノイドという少量で効き目が高い農薬が出現しました。ネオニコチノイドは、神経伝達物質の受容体に結合し、神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめる農薬です。

トキは、野生絶滅種で特別天然記念物でもあります。中国から寄贈および貸与された個体を用いて飼育下繁殖が続けられ、新潟県佐渡市を中心に野生復帰訓練が始められました。しかし、その繁殖成功率は低く、卵は産まれても全く孵らない状況が4年続きました。その要因として環境化学物質の影響があげられました。そこで星先生は研究室の学生とともに、ニホンウズラを用いてネオニコチノイド系農薬が生体や各器官に与える影響の評価、交配試験を行われました。その結果、ネオニコチノイド系農薬はニホンウズラの繁殖機能に影響を与えていることが判明し、トキにも何かしらの影響を与えているのではないかと示唆されました。

この結果を地域の方に発表されたことにより、佐渡市ではネオニコチノイド系農薬は使用されなくなり、環境保全に力を入れ始めました。農薬の使用と直接の関係は証明されていませんが、それ以降トキの卵が孵るようになったそうです。

農薬とどのように向き合って農業に取り組んでいくのかがこれからの課題だと星先生はおっしゃっていました。

中塚 万智